研究内容
課題1. 関節リウマチの病態形成におけるリゾリン脂質の役割
(野地裕美)
 リゾホスファチジン酸(LPA)やスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)などのリゾリン脂質は、Gタンパク質共役型受容体を介して多彩な細胞機能を調節しており、様々な疾患の病態形成とも関連している。慢性炎症性自己免疫疾患の関節リウマチ(RA)関節病変では、著しい血管新生が認められ、滑膜細胞が異常増殖してパンヌスを形成し、関節軟骨が破壊される。血管新生を亢進することが知られているリゾホスファチジン酸は、関節リウマチ患者の滑液中にも存在しており、滑膜の肥厚に必要な血管新生や関節組織細胞の活性化を促して、関節の破壊に深く関与していると考えられる。そこで、RAの病態形成におけるリゾリン脂質の役割と作用機構について明らかにすることを目的として、RA患者の滑膜細胞(RASC)での応答を種々の炎症性サイトカインやRA関節滑液を用いて、主に細胞内シグナリングのレベルで解析している。
課題2. 細胞機能を調節する食品成分の分離とその作用機構の解明
(野地裕美)
 薬食同源と呼ばれるように、食事で摂取する食品成分が健康を維持する上で極めて重要な役割を果たしている。様々な健康食品が巷に満ち溢れているが、それらの生理作用について科学的に証明されているものは少ない。我々は、ロイヤルゼリーの水抽出物が、細胞周期のG1期の初期とS期に作用して骨芽細胞の増殖を抑制することを見出している。そこで骨芽細胞の増殖に影響を及ぼす成分の単離と同定し、抗腫瘍活性を示す作用機構の解析を進めている。
課題3. CR3に見いだされた新規の分子機能と構造に関する研究
(野地裕美)
 炎症で中心的な役割を果たしているマクロファージや好中球が異物を貪食する際に機能する接着分子の構造と機能、接着分子を介する細胞内シグナリングについて解析している。特に、モルモット補体レセプター(CR3)については、HA受容体としての新たな機能を有することを見出しており、この膜タンパク質に見いだされた新規の機能と構造との関係を解析する目的で、これまで不明であったモルモットCR3のα鎖とβ鎖の一次構造と高次構造について解析を進めている。
課題4. 免疫細胞の移動や分化制御のメカニズムの解析
(竹内一)
1) 目的: 核内受容体のシグナルが免疫細胞の組織配備や機能分化に与える影響を明らかにすることによって、新たな疾病の治療法を開発することを目的とする。
2) 成果: 核内受容体アゴニストを用いて、免疫細胞の組織配備を制御することに成功した。また、このアゴニストを投与することにより自己免疫疾患モデルマウスで発症抑制効果が得られた。
課題5. 細胞内膜輸送機構の解析
(桐山賀充)
 オートファジーの進行に重要な役割を持つLC3の関連タンパク質であるGABARAPL1およびミトコンドリア結合タンパク質であるNixなどの分子の機能を解析することにより、選択的にミトコンドリアを取り込むオートファジーであるマイトファジーの誘導機序および機能解析を行う。マイトファジーの機構を明らかにすることは、ミトコンドリアの障害が原因となる様々な疾患の病態の解明と細胞の機能調節機構の詳細を理解する上で大いに役立つものと考えており、分子レベルの解析を進めている。