DNA複製装置はどう調節される?

 DNAは生命の設計図といえる遺伝情報を含んでいる。DNAの維持、複製とDNAに含まれる情報の発現は、あらゆる生命現象の基本である。また、生命は109にも及ぶ情報単位を細胞の核内にきわめてコンパクトに収納(凝縮)している。細胞の増殖時や発生分化の段階で、凝縮と脱凝縮をダイナミックに繰り返し、しかも厳密に制御されて、遺伝情報の維持・発現を行っている。
 我々は、DNA複製に関与している因子群および相互作用するタンパク質の機能を解析し、さらにDNA修復やDNA転写などDNA上に起こる各種の反応との関係、核構造の中での挙動を明らかにし、DNA複製装置がどう調節されているかを解明したいと考えている。


真核細胞における複製フォークのモデル図

 これまでに、染色体DNA複製酵素のひとつであるDNAポリメラーゼεの第二サブユニット(DPE2)とヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を含むSin3複合体構成サブユニットSAP18との相互作用を見いだし、複製後のDNA凝縮との関連、転写と関連を示唆している。


DNAポリメラーゼεが複製フォーク上にSin3複合体を呼び込む。複合体中のHDACが複製後のヒストンの脱アセチル化を行い、クロマチン構造の再凝縮化へ導く。