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◆研究概要◆

解析化学は分子(種)の構造、物性、反応性および機能を深く探求することにより創薬研究に寄与することを目的としています。特に溶液中の反応中間体や生体分子の動的構造と反応性−機能の関連に注目し、マクロな物性や機能の発現機構をミクロに解明する新しい分析法の創出や量子力学と統計力学に基づく溶液化学解析手法の開発を行います。そして、これらの成果の創薬有機合成への応用を目指します。

質量分析装置の開発

質量分析とは、文字通り「分子の質量」を測定する分析です。具体的には様々な方法で化合物をイオン化し、電場によって加速します。これらを種々の方法によってふるい分け、イオンの質量に関する情報を得ます。これによって注目する分子の分子量はもちろん、例えばタンパク質などの巨大な生体分子では、アミノ酸配列までが明らかにできます。このように質量分析は非常に強力な分析法である反面、化合物をイオン化するための条件が過酷なために比較的不安定な化合物の分析には不向きとされていました。我々の研究室ではこれらの問題点を克服するための装置開発を行っており、既にコールドスプレーイオン化法という非常に穏和な条件での測定に成功しています。これによって、例えば水素結合などの非常に弱い相互作用によって結びついている分子集合体などを、イオン化によって破壊することなく観測することができます。

CSI-MS
コールドスプレーイオン化質量分析装置

有機分子の三次元構造解析(結晶スポンジ法)

原子レベルで分子の三次元構造を測定する手法として、単結晶X線構造解析があります。これは分子の形を”直接”見ることができるため、非常に強力な解析ツールです。しかしながら、解析できる対象は「単結晶」に限られるため、液体や結晶にならない化合物には適用することができません。この問題を解決する手法として、藤田・猪熊らによって単結晶を必要としないX線解析法「結晶スポンジ法」が開発されました。医薬品や香料など、有機分子には単結晶が得られないものが数多く存在するため、結晶スポンジ法がこれらの三次元構造解析を可能とします。

crystalline sponge
結晶スポンジ法による有機分子の解析

生体高分子の分析

私たちの体は多様な生体高分子によって構築されています。これらの分子の溶液中での挙動を調べることは、生体内で起こっている様々な化学反応を知る上で極めて重要であり、分子生物学分野だけでなく、薬学分野においても不可欠な研究領域となっています。我々の研究室ではコールドスプレーイオン化質量分析を始めとする種々の分析法を用い、タンパク質、核酸、脂質など重要な生体内分子の振るまいを明らかにします。その結果例えばDNAが4重らせん構造を取りうることなどを明らかにしています。また、水はたくさんの分子がお互いに水素結合を介してネットワークを形成していると考えられていますが、この事柄を直接観測するのは意外と困難です。われわれは上記の分析機器を用いることで、多数の水分子が会合している様子を捉えることに成功しています。

DNA structures
当研究室の分析機器によって発見された
種々のDNAらせん構造

有機反応の追跡

有機反応の反応機構を理解することは生体内現象の根本的な理解につながります。当研究室では有機反応において、原料、生成物ならびに反応中間体など反応系中に存在するすべての化学種を同時に観測し、それらの濃度の経時変化を質量分析によって追跡するシステムの開発を行っています。これによって反応中の各成分の振るまいが明らかとなり、例えば反応が効率よく行うためにはどのような工夫が必要か、などに対する予測が可能となります。


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