神経科学研究所セミナーで発表しました

薬理学講座・山田麻紀には、神経科学研究所PIとしての顔もあります。各ラボの交代制でのセミナーが月1回開催されており、Laboratory of Neuropharmacologyからは、まず山田が以下の講演を行いました。

日時: 2021年07月16日(金曜)15:00時~16:00時頃
場所: 徳島文理大学香川薬部棟 1階会議室

記憶に関わる神経細胞・スパインは何割か?
~記憶の素子を可視化する~  

薬理学講座・山田麻紀

ある記憶に関わる神経細胞の率・シナプスの数がどの程度か、答えはまだでていない。山田が神経科学の研究を本格的に始めた2000年当時は、さらに状況は混沌としていた。ユニット記録という電気生理学の手法からは、あらゆるタスクで活動する興奮性神経細胞の率は最大6%とされていた(HenzeJNP2000)一方で、当時は細胞死が認知症の原因だと考える病理学者も多く、分子科学者も集団での解析を中心にせざるを得なかった。山田は1998年頃、タイプ2のIP3受容体が神経細胞の一部にしか発現しないと発見してこの問題に興味を持ち始め、2000年からこの研究を続けてきた(CerCor2009など)。現在では、ごく少数の神経細胞のごく少数のシナプスの変化が記憶をになうというSparse Codingの考え方は常識になりつつあるものの、具体的にどの細胞・シナプスが入力によって変化するのか、まだ明らかになっていない。薬理学講座からの2020年の論文(SciRep)では、シナプス部位については一定の成果をあげたと自負しているものの、「記憶担当細胞」についての謎はまだ残っている。神経科学研究所のPIとしてのテーマでは、独自の観点から勝負に出る計画なので紹介する。