解析化学講座 瀬高渉准教授が「米国科学アカデミー紀要」に掲載されました!

香川薬学部 解析化学講座の瀬高渉准教授の研究成果が「米国科学アカデミー紀要」に掲載されました。また、朝日新聞にも内容が紹介されました。

分子ジャイロコマの合成と温度に依存した結晶の複屈折変化

(徳島文理大学香川薬学部1、科学技術振興機構さきがけ2)瀬高 渉1,2・山口健太郎1

米国科学アカデミー紀要にオンライン版として掲載済(2012.5.29).

Thermal modulation of birefringence observed in a crystalline molecular gyrotop

Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 109, 9271-9275 (2012).

近年、医薬品や液晶や有機ELなど機能を持った有機小分子の材料が実用化され、私たちの暮らしを豊かにしています。これらは分子が静止した状態の機能、あるいはその機能の変換が利用されています。一方、分子はその一部が回転したりする熱運動を示すことが知られています。しかしながら分子の一部が動いている状態は、これまで機能分子化学の点からはあまり注目されておらず、未解明の機能が存在する可能性があります。

私たちは分子ジャイロコマを設計・合成しました。これは、かご型の骨格の中に、回転子として「亀の甲」の名で知られるベンゼン環が架橋している分子です。この分子のかごの大きさは約1立方ナノメートルととても小さく、内部のベンゼン環は結晶という固体の状態でも、室温で毎秒100万回程度と高速に回転していました。さらに結晶中でベンゼン環が動いた状態は、複屈折率という結晶が光を曲げる性質に影響を与えることを発見しました。

当然ながらこのような性質を示す結晶は、これまでに例がなく応用例もありません。観察された複屈折率変化は、今後、新規な分子運動の観察法としての利用や、光通信における光変調素子として利用が期待されます。

図.ジャイロコマ(左上)と分子ジャイロコマ(右上、結晶中の構造。青と緑が炭素原子、赤紫がケイ素原子、水素原子は省略)と結晶の偏光顕微鏡写真(下、複屈折による干渉色が観察される。)